シニア・エンジニア(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第11話「助人無用」(脚本:中村勝行、監督:大熊邦也 (C) 松竹)より

念仏の鉄は茶屋に勤めるおこの(白川和子)に惚れて巳代松や正八に借金を無心する始末であったが、おこのは鞍三(嵐寛寿郎)の女房だった。おこのは病を患ってしまい、高麗人参を工面するため二十両が必要と医者に言われた鞍三は思い詰めた顔をして出て行った。そして会ったのはなんと

鞍三「虎やん、久しぶりだなあ。」
虎「鞍三さんも達者なようで。」

なんと鞍三は天狗の鞍三という仕置人だったが足を洗っていたのだ。そして直談判が始まった。

鞍三「わい、仕事が欲しいんや。」
虎「仕事を?」
鞍三「どうしても二十両の金がほしい。」
死神「夕ベ仕事ノ依頼ガ一件アリマシタ。ソレヲヤッテイタダキマス。相手ハ七福神ノ富五郎デス。」
鞍三「え、富五郎を?」
死神「仕事料ハ二十両。」

死神が金を置いた。

鞍三「すまん、虎。恩に着るぜ。」

そして鞍三は帰って行ったのだが

虎「一人じゃあ、無理だなあ。」

なお富五郎(田口計)はおこのが勤める茶屋を乗っ取ろうと女将のおせい(松村康世)を源六(志賀勝)などに命じて殺させていた。鞍三もその茶屋で働いていて下足番を務めていた。茶屋の跡を継いだのはおせいの幼い娘のお千代(玉山由利子)である。

さて死神は虎の命を受けて念仏の鉄のところへ行き、虎のところへ呼び出した。

念仏の鉄「天狗の鞍三?」
虎「俺の兄貴分だ。」
死神「鞍三サンハ二十年前ニ足ヲ洗ッタ。感モ腕モ鈍ッテイルニ違イナイ。」
念仏の鉄「手助けしろって言うのか?」
死神「コレハ元々、オ前ガ持ッテキタ仕事ダ。」
念仏の鉄「ちくしょう、あれはせりにかけるつもりだかんなあ。」
死神「ワカッテイル。」

と言うわけで死神が鉄にお金を渡した。

死神「オ前ニ一ツ借リガデキタ。」
虎「この借りは必ず返す。やってくれ。」

と言うわけで分ける段になり

巳代松「けえしてもらうよ。」

正八もおていも借金分を鉄から分取った後

正八「でもさあ、二十年前の殺し屋なんて仕置人の骨董品じゃん。」
念仏の鉄「だから手助けしてくれって言ってんじゃねえかよ。」
おてい「で鞍三さん、承知してんの?」
念仏の鉄「鞍三さんにわかんないようにやってくれってのが条件なんだよ。」

困った仕事である。

正八「ややこしい話だこと。」
中村主水「そんな七面倒くさいことをするよりさあ、こっちで受けちまった方が仕事が簡単じゃねえのか?」

と文句を言う二人だったが巳代松がその事情を説明した。何しろ鞍三も観音長屋に住んでいたから主水以外は顔見知りなのである。

巳代松「とっつぁんはなあ、銭が欲しかったんだ。女房に飲ませる薬を買うためになあ。」

さて正八が重要な疑問を呈した。

正八「そんなことよりさあ、とっつぁんがどこでどうやって殺しやるかあ、それがわかんなきゃ助っ人のしようがないじゃない。」

と言うわけで探りを入れに鉄が鞍三とそば屋で会った。

鞍三「あんたも同業やったんか。」

そして聞いたのは

鞍三「世の中は不思議なもんや。この仕事が前の女房の仇討ちになるとは思わなかった。」

なんと、おせいは前の女房でお千代は鞍三の娘でもあると言うのだ。手切金代わりに店を渡したのだ。驚く鉄。

念仏の鉄「じいさん、今度の仕事の頼み人はあの娘。」

これを聞いて鞍三も驚いた。

鞍三「これまた奇遇やなあ。」
念仏の鉄「で、いつなんだ?」
鞍三「今夜。」
念仏の鉄「道具は?」
鞍三「あんた、一体、何を探りに来たんや?」

仕方なく鉄はこう答えるのであった。

念仏の鉄「いや、別に。」
鞍三「あんた、余計な手出ししたらあかんでえ。」

そして夜になった。絵草紙屋の地下室に集まる鉄達。正八が鞍三を見張る。そして

正八「とっつぁん、出かけたぞ。」

一同はそばを食べてたが

中村主水「行くぜ。」

鞍三は富五郎の屋敷の中に入ることは成功したが、吹き矢の腕は衰えており、富五郎を狙ったが外してしまった。これにより、侵入がばれ

正八「失敗。木場の方。」

今回、正八は走る、走る。

さて鞍三を追いかける子分大勢を主水は斬りまくった。そうとも知らずに(?)鞍三は追いかけてきた富五郎と源六を狙う。鞍三が富五郎に近づいた。うっかり、鞍三は桶を堀に落としてしまった。富五郎が匕首を抜いて後ろを向こうとしたその時、鞍三とは反対側に潜んでいた念仏の鉄の手が見えた。ニヤリと笑う鉄。板の陰に隠れていた鉄は富五郎の背中をひっぱり、富五郎は板に背中越しに張り付いて格好になった。そして背骨折りが決まった。その後、鉄が背中を押すと富五郎はそのまま鞍三の方へ向かって歩いていく格好になった。そこを狙いすませて鞍三が富五郎を刺した。鞍三が刺したのを確認してニヤリと笑って鉄は去った。

次は源六だ。巳代松は屋根の上でイライラしていた。

巳代松「とっつぁん、何してやがんだ、おっせえなあ。早く来ねえかよ。」

巳代松はヤカンを改造して「音消し」の仕掛けを作っていた。やっと鞍三が源六のところにやってきた。源六も鞍三に気がついた瞬間、巳代松の放った弾が命中。鞍三は難なく源六を刺した。

翌朝。おこののために包丁をふるって魚を捌こうとする鞍三をみて、鉄は手伝ってやったのだが、鞍三はこう言うのであった。

鞍三「ワシも歳やなあ。死んだ人間相手にしてるようではあかんわ。」

それを聞き、思わず鞍三を観る鉄。ニヤリと笑う鞍三。鞍三はわかっていたのだ。なので鉄もニヤリと笑うしかなかったのであった。