変更(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第12話「親切無用」(脚本:松原佳成、監督:高坂光幸 (C) 松竹)より

勘定吟味役の上月数馬(河原崎次郎)は鳴門屋の一件で戸田剛造(外山高士)が不正を働いている(二万五千両を一万五千両と偽って報告書に書いている)のに気づき、極楽屋与三郎(大木実)もいる場で戸田を詰問。戸田が極楽屋に目配せすると極楽屋は立ち去った。

戸田剛造「その事なら、御奉行にお尋ねください。」

そして上月は勘定奉行の稲葉典膳(横森久)に尋ねたが

稲葉典膳「その方が乱心してワシに切りつけたのじゃ。」

そして上月は始末されてしまった。その一部始終を平七(赤崎英樹)も見ていて、お米(村田知榮子)にも話した。

平七「旦那様が、上月様が。」

お米は針仕事の手を止め、考えた。

そして場面変わって絵草紙屋の地下室。鉄は主水がいるので大慌て。

念仏の鉄「このやろう、てめえ、何しに来たんだ、ここへ。ふざけやがって。失せろ。殺しをやる側、やられる側が一緒にいてどうすんだ、バカ。虎に知れたら皆殺しだぞ。」

だが主水は黙って動こうとしなかった。主水は上月が殺された件や上月の下男もお米が育てていたことを調べてきたのだ。

巳代松「鳴門屋を殺した連中はわかったが、八丁堀の始末はどうする?」
中村主水「俺の殺しを頼んだのは産婆の婆さんだが、必ず依頼を取り下げに行くだろう。」

正八が、依頼人が違う場合はどうなるという話を始めた直後、

中村主水「虎の野郎、間違えて殺されてたまるかい。おめえらぶっ殺してでも俺だけは生きのびるぞ。」

と言い放ち、巳代松が「掛け合ってみろよ」と言うと

念仏の鉄「あ、そう。良いわよ。話しても良いわよ。だけどお前ら、ちょっと虎という人間を甘くみすぎてるんじゃないか? ちょっと間違えばあの世行きだぞ。覚悟はできてるんだね、それぞれに。」

主水はこう言い放った。

中村主水「虎だか猫だか知らねえが、こっちとらそんなの、へも怖くねえぜ。俺の命が惜しくて言ってるんじゃねえんだ。俺はただ闇雲に人殺しだけはしたくねえ。ただそれだ。」

それを聞き、

念仏の鉄「よしわかった。俺はちょっと行ってくらあ。しばらくここ、動くなよ。」

と階段を登り、正八に戸を開けさせ、外へ出ようとした、その時、鉄は思わず後退り。なんと死神が立っていたのだ。

念仏の鉄「わかった、わかった。あと二日のうちになんとかするよ。それより、虎に話があるんだ。」

と言って外へ出た瞬間、虎もいるのに鉄は気がついた。慌てて正八が戻り

正八「虎が出た。死神も来てる。」

慌てて主水は灯りを吹き消し、階段のところで身構えた。緊張が走る中、誰かが降りようとしている。

念仏の鉄「俺だ、俺だ。俺だよ。降りるよ。良いね。」

中にいた皆、警戒を解いた。念仏の鉄が降りてきてこう言った。

念仏の鉄「八丁堀、残念だけどよ、おめえの命、取り下げになっちゃった。」

こんな時でも冗談を言うのだから、この男は遊んでいるとしか思えない。さらに金が出たらしく、鉄は金を机に置いてこう言った。

念仏の鉄「えー、勘定奉行稲葉典膳、勘定奉行組頭戸田剛造、口入屋極楽屋与三郎、以上、三名、やることに決まったよ。」

かくして中村主水の命は長らえたのであった。余談だが稲葉典膳の屋敷で働くおきみを演じた小坂知子は後に被害者役で再出演するのである。