志願(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第9話 「悪縁無用」(脚本:保利吉紀、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

さて寅の会は梅見の宴として催されたが、その挙句は

吉藏「ご披露いたします。

梅見頃
八百八町に
無宿の音吉

虎漫筆」

音吉(早川保)の喉首には傷跡があると吉藏は言った。

念仏の鉄「それだけありゃ十分だ。」

屋外なので指値は指で示す事になった。最終的に念仏の鉄が競り落としたが、その金額は

虎「この一句、一両と一分にて落札。」
念仏の鉄「梅見頃、鶯鳴いて、ホーホケキョ。鉄漫筆。」

当然、ほとんどの者が文句を言ったが、巳代松は錦絵を手にしたままポーッとしている状態で、おていにバカにされる始末。だが標的が音吉で

正八「あいつかも知れねえなあ。この前、おりく姐さんを探してた。」

と聞いた途端、巳代松は正気に戻り

巳代松「今、なんてった?」

やる気がみなぎるのであった。正八から間違いないことを確かめると

巳代松「念仏、この仕事、俺がやるぜ。」
念仏の鉄「いい加減にしろ。まだそいつと決まったわけではねえ。おりくというとすぐカッカする。」
巳代松「(図星だったのか大声で)妬くんじゃねえ。」
中村主水「ガタガタ言うな。正八、おめえ、当たってみろ。」

正八はどうやって当たるのよ、と文句を言ったが、芸者の入れ札がある事を主水は示唆してそこを張り込めと言うのだが

巳代松「俺が行ってくるよ。」
中村主水「待て。これは正八の仕事だ。」
正八「なんだ、俺の仕事じゃねえか。」

とりあえず巳代松の暴走は抑えられた…かに見えたのだが、後日、色々と判明し、正八が鉄のところにやってきた。

正八「あのねえ、松っつぁん、入れ込んでしょうがねえんだよ。音吉のことわかったしさあ。」

と言うわけで鉄が正八と一緒に巳代松の家へ行くと何と巳代松は竹を五本も用意していた。だがそれを観て鉄が言った言葉は

念仏の鉄「音吉、亭主だって?」

それですか、鉄さんよ。さらには

念仏の鉄「とんだ女に惚れちまったなあ。気持ちはわかるがよ、女は魔物だ。おりくにしたって亭主にウロウロされたんじゃ商売の邪魔になるだろうし。それで殺してくれって腹づもりかもしれんぞ。」

からかっているだけである。当然

巳代松「そんなていそうな女じゃねえ。」

と相手にしなかった。念仏の鉄は話題を変えた。

念仏の鉄「おめえ、何作ってんだ? 短筒か?」

巳代松が作っていたものは

巳代松「いっぺんになあ、鉛玉が五発、飛び出すんだあ。」
念仏の鉄「へえ。五発も飛び出したら二発ぐらいお前のところに帰ってくるんじゃないのか?」
正八「よしなよ、そんなおっかないの。二発も帰ってくるの。一発ぐらい当たればそれで十分じゃないのよー。第一さあ、そんなの二間までしか近づかなきゃ撃てやしないんだろう?」

鉄も正八も呆れ返ったが

巳代松「俺はな、おりく姐さんの恨みの深さがよくわかるんだ。音吉には五発ぶち込んでもまだ足りはしねえ。」

なおも正八は食い下がった。

正八「その恨みがどういう恨みか…」

わからないと言おうとしたのだろうが

巳代松「そんなこと、知るかよ。」

それでも鉄はからかった。

念仏の鉄「お前がモタモタしてたら、俺、やるよ。」

それを聞き、慌てて巳代松はこう言った。

巳代松「音吉は俺にやらせてくれよ。その前にこれ作っちゃうから。な、な。」

その後、色々あって音吉の悪事が進行。

死神「(鉄の家の外から鉄に)頼ミ人カラ苦情ガアッタ。虎ガ怒ッテイル。音吉ヲスグ仕置シロ。」

となり、おりくが巳代松の元を訪れて

おりく「噂によると江戸には晴らせぬ恨みを晴らしてくれる仕置人がいると聞いています。」

となり

おりく「音吉という無宿者、絵師の雅泉堂(北村英三)、それに瓦版屋の長次(園田裕久)です。」

十両ものお金を託されてしまった。最初の殺しの頼み人はおりくではないらしい。おそらくおうめ(松井加容子)なのだろう。それは兎に角、最終的に虎と鉄との間で競りが行われ

念仏の鉄「六両と一分」

で話がつき、正八の調べで連中がおりくをモデルに春画を描かせていた事が突き止められ、長次を主水、雅泉堂を鉄が仕置し、音吉は巳代松が例の五連発の短筒で仕置。

巳代松「ざま見やがれ、ちくしょう。」

だが後日、この件が理由で苦しむ事になるとは知らない巳代松であった。