緊急対応 その3(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第32話「阿呆無用」(脚本:村尾昭、監督:高坂光幸 (C) 松竹)より

正八は阿波屋をつけていたのだが、阿波屋も仕置人が動いていることを勘付いていた。そして利助(小島三児)が実際には生きていて阿波屋から金をもらっていることも正八は突き止めた。そうとは知らなかったおみつは利助とバッタリ出会い、大喜び。利助と別れた後、正八がおみつに声をかけた。

正八「今の話聞いたよ。お前のとっつぁんだってな。」

ここでやめておけば良いものを、正八はこんなことまで喋ってしまった。

正八「今、あのおっさん、つけてたのさ。」

当然理由を聞かれたが、正八ははぐらかして立ち去った。

その後、絵草紙屋で鉄、主水、おてい、巳代松、正八が色々と話していたのだが、なんと付句には利助もあるという。ん? 辻褄が合わないような気がするが先へ進もう。

正八「ちょっと待ってよ。おみつ、てめえの父親、仕置にかけることになるじゃない!」
念仏の鉄「まあ、そう言うことだねえ。」

その時、上で物音がした。巳代松が灯りを吹き消した。

中村主水「正八。」

正八と巳代松が上に上がった。すると絵草紙屋の中におみつがいた。逃げるおみつ。巳代松は追いかけようとする正八を呼び止め、一旦、中に帰らせた。その様子を外から源吉(唐沢民賢)が見ていた。そして話し合いの結果、おみつを殺すことに話は決まった。中村主水が冷たく言い放った。

中村主水「大体、てめえがおみつに後をつけられるからこんなことになるんだ。正八、おめえが始末しろ。」

渋々ながら正八は始末に動かざるを得なかった。

翌日。利助のところへ向かって歩くおみつを正八はつけた。おみつは利助の家にあがった。利助はおみつをもてなしたのだが、そこへ伊兵ヱ(川合伸旺)と源吉が来てから情勢が変わった。入るなり伊兵ヱはおみつをビンタした。

伊兵ヱ「利助、このおみつな、今江戸で噂のある仕置人とやらにこのワシの殺しを頼んだ気配がある。」
利助「仕置人、そんなの噂だけでしょう。」
伊兵ヱ「ところがそうじゃない。当のおみつに当たれば一番確かかと思ってな。」

源吉はおみつを縛り上げ、猿轡もかましていた。すると利助がこんなことを言い出した。

利助「伊兵ヱさん、その前に一つ面白い趣向があるんですがねえ。」

はて何か? 伊兵ヱが利助の方を向くとなんと利助はとんでもないことを言い出した。

利助「あれを抱きてえんですよ。」

なんと。おみつも伊兵ヱも驚いた。

伊兵ヱ「仮にもお前の娘だよ。」
利助「なあに、娘ったって赤の他人でさ。しばらく会わねえうちにめっきり女っぽくなりやがったよ。」

とんでもない男である。

伊兵ヱ「そうか。そうかい、そうかい。それでは一つ、私も味見させてもらおうか。」

と言い放つと伊兵ヱが味見を始めた。思わず、正八が戸を開けて入ろうとしたのだが、そこへ来ていた巳代松が一生懸命正八を制止した。利助の家では味見などが続いた。そして終わったのだろう。伊兵ヱはおみつの猿轡を外してこう言った。

伊兵ヱ「なあ、おみつ、もうはきなさい。仕置人に頼んだんだろう。」

するとおみつは舌を噛み切って死んでしまった。その様子を巳代松がしっかり観た。巳代松の様子からそれを察した正八はなおも中に入ろうとしたのだが、巳代松は力づくで連れ出すのであった。

正八「おみつの奴、俺達の事、一言も言わずに死んでったよ。」

と正八は皆に言うのであった。