熱暴走 その2(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第29話「良縁無用」(脚本:松原佳成、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

主水が待ちくたびれて帰った後、念仏の鉄が絵草紙屋にやって来たのだが、何故か地下室には鉄だけがいて、机に突っ伏した状態になっていた。それを入り口から巳代松と正八が覗いていた。なお今回おていは登場しない。なかなか起きあがろうとしないので巳代松と正八は地下室に入った。

巳代松「鉄、元気ねえな。仕事取れなかったんだろう。たまにはそういうこともあるさ、な。」
正八「鉄さん、今度頑張ればいいじゃん。」

ようやく起き上がった鉄は黙って懐から二両を出した。

正八「なんだ、仕事取れてんじゃないよ。」

すると鉄は立ち上がり、巳代松の右手を握ってこう言い出した。

念仏の鉄「頼む。おめえ達、俺に力貸してくんねえか?」

何を言い出すのだろうか?

巳代松「何言ってんだよ。いつもみんなでやってんじゃねえかよう。急に改まんなよ。どうしたんだよ。」
念仏の鉄「ああ、今度ばっかりはよう。」

なんだか様子が変である。

巳代松「で、誰をやるんだよ。」
念仏の鉄「その相手…」

鉄は絶句して頭を抱え込んでしまった。

正八「なんだい、鉄さん、相手わかんなきゃ仕事できないよ。」

仕方なく

念仏の鉄「相手は、それが…」
巳代松「誰だよ。」

話が進まない。

念仏の鉄「早く言えばよう。」
巳代松「早く言えよ。」

仕方なく鉄はいった。

念仏の鉄「唐津屋の…お京さん(佳那晃子)だ。

驚く巳代松と正八。

巳代松「じゃあ、おめえが惚れてる娘か?」

そうなるよねえ。すると鉄はこう言い出した。

念仏の鉄「馬鹿野郎、そんなじゃねえよ。」

とか言ったのだが

念仏の鉄「俺はおかしいと思うんだよ。あの人が人に恨みを買うようなことをするわけがねえんだよ。俺、どうも初めっからこの仕事、おかしいと思うんだよ。」

とまあ暴走気味に力説した。さらに二両を手に取り

念仏の鉄「これ、おめえ達に全部やるからよ、兎に角、今度だけは俺一人に任してくんねえか、な。」

巳代松が宥めた。

巳代松「おお、鉄さん、おめえはな、まだ頭に血がのぼってるんだ。」
念仏の鉄「いや、そんなことねえよ。」

大声で言っているので巳代松の言っていることは図星である。と言うわけで

巳代松「俺達が調べてくるから、正ちゃん、な、頼む。」

そして

正八「じゃあ、決まったらさ、これもらっとく。」

正八は貰った金を机の上に放り投げた。正八は唐津屋に向かい、巳代松は鉄を座らせ、立ち去るのであった。さてどうなるのかは映像でご確認を。