無収入(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第26話「抜穴無用」(脚本:松原佳成と嵯峨忍、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

脚本を書いた嵯峨忍は記録の野口多喜子さんで彼女が書いた脚本を松原佳成さんが手直ししたという。

さて本題。今回は冒頭で悪事が行なわれた。そしてすぐに寅の会。

吉蔵「月峰の
月見屋敷に
黒雲や
虎漫筆」

この時の標的は将軍家お抱えの月見屋敷に住む月峰(灰地順)と側用人 尾関一心(南原宏治)である。頼み料は三両だった。あまりにも格安な仕事であったが念仏の鉄は競り落とそうとした。しかし、努力が足りず、他の仕置人に競り落とされてしまった。

虎「この命、一両二分にて落札。」

さて正八の絵草紙屋。おていがやってきた。だが店先で鉄が寝ているのを見て、事情を察してこう言った。

おてい「あの様子ではまたなしかな。」
正八「そのようですねえ。」
おてい「なあんだあ。折角、お金にありつけると思ったのになあ。夏の着物が欲しいなあ。しょうがない。じゃあ、あたしは本職の方で稼ぐかなあ。」

そして正八はこう言った。

正八「あ、それだったらいつでもお手伝いしますわよ。」
おてい「いいえ、結構。あたし一人で十分なのよ。」
正八「そうでしょうか。」
おてい「ええ。」

正ちゃん、がっかり。すると

正八「あーあ。またうるさいの来たよ。」

来たのは巳代松。

おてい「さ、あたしは商売、商売。さようならっと。」

巳代松と入れ替わるようにして出ていった。巳代松は鉄を蹴飛ばしながらこう言った。

巳代松「こんちくしょう、このやろう。」
正八「(巳代松を宥めて)ちょ、ちょっと、待って。よしなよ。鉄さんだって生身の人間なんだから、たまには気分が乗らないことがあるの。」

だがなおも怒りが収まらず、巳代松は鉄の耳元でこう言った。

巳代松「おめえは遊びが過ぎるんじゃないか? 次の寅の日まで忘れるな、この野郎。」

こうして巳代松は去ったのだが、今度は

正八「金に一番細かい人が来たよ。」

やってきたのは中村主水である。それを聞いて鉄は起き上がり、立ち去った。入れ替わるようにして主水がやってきた。正八は鉄から(?)の手紙を渡した。

中村主水「仕事か?」

正八は外へ出て主水が手紙を開いて読めば

中村主水「ちょうど銭も切れてたところなんだ。『本日』、今日やるのか!」

だが

中村主水「『売切』」

怒った主水は手紙をくしゃくしゃに丸めて正八にぶつけて当たるのであった。