過去事例 その3(あまちゃん)

あまちゃん 第17週「おら、悲しみがとまらねぇ」第99話(脚本:宮藤官九郎、演出:梶原登城 (C) NHK)より

アキ(のん)は岩手物産展のために上京した足立ヒロシ(小池徹平)と一緒に純喫茶『アイドル』へ行った。そこはまだ甲斐(松尾スズキ)が営んでいて、鈴鹿ひろみのレコードも飾られていた。思い切ってアキは甲斐にこう言った。

天野アキ「あのう、私、以前、ここでバイトしてた、天野春子の娘です。」

それを聞いた後、口を開けて驚く甲斐。だが、続けて出てきた言葉は

甲斐「ここにあったあ!」

無くしたと思ったリモコンがアキとヒロシが座っていた席のそばにあったのである。それはテレビのリモコンだった。ちょうどテレビがアナログ放送からデジタル放送に切り替わる頃。甲斐がテレビをつけるとちょうどその告知のCMが流れた。

甲斐「覚えてますよ。(アキ達に)どうぞ。」

名前に反応はなかった。覚えてないのかと落ち込むアキ。純喫茶『アイドル』はここに間違いないと言うヒロシ。そして雑談が始まったのだが、ヒロシはまだアキに好意があるらしい。場所じゃない、人だ、とヒロシが言われた話になり

天野アキ「たしかに場所じゃねえ。自分をしっかり持ってれば、どこさ行っても大丈夫なんだ。奈落だろうが、アメ女だろうが。」

すると甲斐が反応した。

甲斐「アメ女?」

甲斐は尋ねた。

甲斐「お嬢ちゃん、アメ横女学園のメンバーなの?」
天野アキ「あ、アメ女じゃなくてその妹分の…」
甲斐「GMT!」
天野アキ「ジェジェ。知ってるの?」

アキは驚いた。そして甲斐は相変わらずこんな口調で語り始めた。

甲斐「熱いよねえ、GMT。有馬めぐがいるでしょ。あと小野寺ちゃん。彼女、熱いよねえ、訛ってて。ブログも訛ってるよねえ。」

思わずヒロシが「やけに詳しいですね」と尋ねると

甲斐「そりゃそうだよう。アイドルオタク歴40年だよう。」

ここで甲斐は気がついた。

甲斐「ジェジェ。なんか聞いたことがあるぞ。すごい昔に、ジェジェ。」

そこで天野アキは立ち上がってこう言った。

天野アキ「多分、母です。昔、ここでバイトしていたことが…」

しかし

甲斐「そんなのいいや。太巻っているだろう。プロデューサーの荒巻太一。若い頃、ここに来てたんだよう。」

アキは座り込んでしまった。

天野アキ「知ってます。」
甲斐「え?」
天野アキ「天野春子の娘なんで、あたし。」

やっと甲斐は思い出した。

甲斐「ジェジェ。なんだ。春ちゃんの娘なの?」

アキのそばに座り込んで話を続けた。

甲斐「早く言ってよ。」

言ったじゃん。

天野アキ「言いました。三回言いました。」

小堺一機さんとは関係ございません。

甲斐「あ、そう。」
足立ヒロシ「そこはジェジェでしょ。」

甲斐は話を続けた。

甲斐「そうそうそう。春ちゃん、普段は訛ってないのに、びっくりした時だけジェジェって言ったんだよ。懐かしい。そうねえ。GMTなのか。春ちゃん、娘に夢を託したんだなあ。」

実は鈴鹿ひろみも「自分が果たせなかった夢を娘に叶えて欲しかったのよ」と考えてそう言っていた。どうもアキは腑に落ちない様子だったが甲斐も同じことを思ったようだ。思わず考え込むアキであった。