過去事例 その4(あまちゃん)

あまちゃん 第17週「おら、悲しみがとまらねぇ」第101,102話(脚本:宮藤官九郎、演出:梶原登城 (C) NHK)より

慰留という題も考えたが、こちらの題の方がしっくり来るような事例である。

さて天野アキ(のん)はハートフルを解雇される事が決まってしまい、悲嘆に暮れていた。GMTの他のメンバーも納得行かなかったが、水口(松田龍平)からは理由が話されなかった。進退極まったアキは春子(小泉今日子)からの電話でこう言った。なお春子はヒロシ(小池徹平)から東京でのアキの様子を聞いていた。そして春子はアキから事務所をクビになった事を聞き

天野アキ「もう帰っていい? いいよねえ。」

すると春子の回答は

天野春子「ダメよ。」

それは何故か。これまで春子は忘れ去っていたのだが、自分が以前、平成元年に北三陸に帰ると決意して上野の公衆電話から夏(宮本信子)に電話した時と同じ状況だった事、そして、その時のやりとりが蘇ったのだ。

その時、夏はワカメを干していた。

天野夏「はい。天野でございます。」
天野春子(有村架純)「あたし。」
天野夏「どちら様でございますか?」

この答えに春子は動揺したが、話を続けた。

天野春子「春子ですけど。」
天野夏「ああ、そうですか。どう言った御用件で?」
天野春子「もう、そろそろ帰ろうかなあって思って。」

その言葉に対する夏の言葉は非常に冷淡なものだった。いや、愛情の裏返しだったのかもしれないが。

天野夏「なして?」
天野春子「(絶句した後)まあ、こっちで5年頑張ったし、ご年号も平成になったし。」
天野夏「なして?」
天野春子「(また絶句した後)だから、あたしも23だし、そっちで役場さあ勤めてお見合いさしようかなあみたいな。」
天野夏「なして?」
天野春子「(更に絶句した後)だから、一人じゃ寂しいかなあと思って。もう帰っていいでしょう。」

なので春子(小泉今日子)は「ダメよ」と答えたのである。

天野春子「ダメ。ダメよ、アキ。頑張りなさい。」

寝ていた天野夏は目を覚ましてしまった。アキは「なして」と尋ねたが

天野春子「なしてって、わかんないけど、ここで帰ってきたら、後悔する。」
天野アキ「オラ、後悔なんてしねえ。」
天野春子「あんたがしなくてもあたしがする。」

このやりとりを夏は黙って聞いていた。

天野春子「だから反対したんだよ。反対したじゃん、ママ。甘くないよって。」

春子は昔の事を思いだしていた。

天野春子(有村架純)「そんなのわかってる。」
天野夏「いや、わかってねえ。おめえさ、大騒ぎして周りさ迷惑かけて出て行ったんだ。オラや海女クラブや漁協や観光協会の人達をみんな全員踏み躙って唾吐いて出てったんだぞ。」
天野春子「ママが突き放したからだべ。」

というわけでややこしいが現代に戻る。

天野春子(小泉今日子)「今、帰ってきたら、ママと一緒だよ。腫れ物扱いだよ。雑に慰められて陰で噂されてジロジロ見られて、それで良いの?」

アキは何も言えなくなった。

天野春子「消したい過去を引きずって生きるって、しんどいんだよ。あんた、それでも良いの?」

アキはプッツンしたが

天野春子「アイドルになるんじゃなかったの?」

アキは電話を切ってしまった。さて春子はこの電話をきっかけに一大決心をするのだが、続きは来週以降のお楽しみに。