フィクションなどから拾う情報処理用語? その44 公私混同 (新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第2話 「情愛(なさけ)無用」(脚本:村尾昭、監督:工藤栄一)より

 

この組み合わせで名作でないはずがないのだが、結構遊んでいる場面も多くて、このシリーズのネタも見つかっちゃったあ。もしかしたらBYODに使えるかなあと一瞬思ったけれどもそれは流石に無理。だが題名に「?」をつけたことにより、使えることが判明。しかもここはいつの間にかはてなダイアリーからはてなブログになっていた。使い道がないので10年も放置プレイしていたのが幸いし、何でもありの世界になっていた。私のようなはみ出し者に情けなし(どっかで聞いたような言葉だが偶然だと思います)。というわけで書きましょう。

与力筑波重四郎 (岸田森)の後任(の筈だが明確な描写は実はない)与力高井(辻萬長)は牢屋見回りから昇進したばかりの中村主水が珍しく仕事に精を出して調書を読んでいたのに感心し(多分そういう経緯だったのだろうと思うのだけれど、これも明確な描写は実はない)、声をかけた。

高井「中村、なかなか精が出るなあ。」

主水「はい、中村主水、日夜仕事に精を励んでおります。」

これがウソでそれなりの理由があることを視聴者は既に知っているのだが高井が知るわけがない。

高井「やっぱり牢回りから定町回りへ返り咲いただけのことはあるな。」

主水「は。お陰様で中村主水でございます。」

と感心した高井だったが主水が手に持つ調書をチラッと見て気がついた。本当にチラッと見ただけで気がついたのである。

高井「何だそれは?」

岡本太郎が言いそうな言葉だが、これをいうのには理由があった。

主水「は。4年前の島送りの一件について詳しく調べております。」

なんだそれは。と高井でなくても言いたくなるような事態である。当然の事ながら

高井「4年前の?」

主水「はい。」

高井「(調書を奪い取って床に投げ捨てながら)バカもん!」

まるで名古屋章が「刑事くん」で桜木健一相手に言いそうなセリフだ。まあ事情を知っているのは主水と視聴者のみだからそう言ってしまうのは当然だ。

高井「今になってそんな埃の被った事件を穿り出して何になるのだ。え!?」

激しく怒る与力高井。挙げ句の果てにはこんなことまで言い出した。

高井「やはりお前はまだ、無駄飯喰らいの昼行燈が直ってないらしいな。あと1年もすれば奉行所内で人事の異動がある。」

主水「人事異動?」

高井「きっとお前は(主水の右肩の下辺りの腕(という微妙なところ)を叩きながら)また牢回りだよ。」

流石の主水もこれは堪えたようだ。あの貧乏暮らし(必殺仕業人時代)には戻りたくはない。思わず本音(でも隠すところは隠している)が出てしまった。

主水「牢屋見回りだけは勘弁願えませんか。私はもう懲り懲りしておるんです。一つお取り計らいを。」

だが高井は去ってしまった。その直後も

主水「お願いでございます、御慈悲を。」

とか言いながら、姿が消えたのだろう。

主水「馬鹿野郎。苦労してデカくなりやがって。頭でっかち。」

これも本音だろう。さて主水は真の目的を高井には話さなかったが、実は高井にも話せない事件(仲間の巳代松が島送りになった事件)を調べていた。この公私混同がバレたら打首獄門晒し首。この言葉を後に仲間のリーダー(そう。この頃の中村主水はまさに秘密兵器でリーダーは念仏の鉄なのだ)がなぜか逆立ちしながら言っていたのを思い出す。だから悪様に罵られようと主水は話さなかったのであった。