寿退社?(暗闇仕留人)

暗闇仕留人 第9話 「懸想して候」(脚本:下飯坂菊馬、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

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第9話「懸想して候」1974.8.24

 半次の留守中おきんが惚れた男には裏の顔があった。はじめおきんの新たな人生を祝福する仲間だが、男が外道仕事をしてのけたことが知れ一も二もなく殺すことに。そして虫の息の男から聞き出した仕事の「起こり」と「蔓」は、罪無く殺された幼児と男の仇として始末される運びとなる。

 ロケ地、おきんがルーレットで野博打の富岡八幡宮、今宮神社境内各所(以降、文七と親方のツナギや、親方を尾ける主水のシーンも同所)。檜屋の先妻の男児の死体が見つかる汀、桂川松尾橋上手右岸汀。
*おきんの足抜けについて大吉と議論の糸井貢は青い理屈を開陳、しかし相手が堅気でなくしかも非道を働いたことを知るや即「殺す」発言、揺れる心の描写が興深し。

あらすじは上記の通りなのだが、今回の実質的な主役はおきんと半次だが貢の心の動きも大きな見所。

おきんはヤクザに絡まれたところを文七(伊藤孝雄)に助けられて彼に惚れてしまう。直後に主水は別件で文七の裏の顔を見てしまったが、それがおきんの恋の相手とは当然知らない。実は文七は辰五郎 (遠藤太津朗)配下の凄腕の殺し屋だったのだ。おきんも当然知らず、長崎から帰ってきた半次も交えた三角関係がもつれた末におきんは足抜けを申し出る流れになった。当然、揉めに揉めた(大吉と半次は反対、主水は複雑な心境)のだが、後からやってきた貢は花を手に持ち、おきんに渡す。曰く

糸井貢「おきんさん、これ、女房からだ。いや、あんたの名前を言ったわけじゃない。友達の祝言に行くと言ったらなあ、是非こいつを渡してくれと言われて。」

さらには

糸井貢「あんた(大吉)、どうして認めないんだ。」

と言い、大吉が反対する理由を述べると

糸井貢「それはあんたの覚悟だろう。自分の覚悟を他人に押し付けるのはどうかと思うね。」

と否定して

糸井貢「どだい殺しなんてのは自慢できる稼業なんかじゃないんだ。私には天罰が降ると思っている。だからこそ私達の仲間からまともな幸せを掴むことができる人が出てきたら私は素晴らしいことだと思いたいんだよ。」

なんという青臭い意見なのだろうか。こんな男を主水は仲間にしてしまったのである。その主水は無言である。大吉は憮然とし半次は一番先に出て行ってしまった。

だが文七は足を洗う事と引き換えとは言え、幼子を殺す羽目に陥った。檜屋の後妻おしの(川崎あかね)の依頼で先妻の子供おとまつを殺す事になったのだ。文七も苦しんだのだが、その犯行を知ると

糸井貢「殺す。」

という始末。

中村主水「悪い夢だったなあ。」

なんだかおきんが可哀想。

鉄砲玉のおきん「あたいがやるよ。」

と言ったのだが、結局、おきんはやりきれず、おきんの目の前で貢が文七を始末。だが貢の表情も複雑。この男はやはり殺し屋にはなりきれてなかったのだ。対する主水、大吉、半次は無表情。死に際の文七の言葉から全てを知った一同は文七が手に入れた金を仕留科にするのであった。

鉄砲玉のおきん「あたい、あんた(文七)に会った事を後悔しないよ。」

泣き崩れるおきん。ここからは蛇足かもしれないが、一応書くと中村主水が辰五郎を殺し、村雨の大吉がおしのを殺したのであった。