変更(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第13話「一筆啓上 過去が見えた」(脚本:村尾昭、監督:三隅研次 (C) 松竹)より

今回はあの変態破戒僧の印玄の過去が語られる話である。

今回の依頼は女郎のおよね(武原英子)からおこうが受けたもの。父を殺した印玄を殺してほしいと言うのだ。それを聞いて流石に中村主水は驚いたが、最終的には引き受けた。渋る捨三には印玄の監視を命じ、掟だから話が本当であるなら躊躇なく殺すという市松にはおよねの調査を主水は頼んだ。なお、おこうは印玄の素性を知らなかった節がある。

当然の事ながら印玄には伏せられていたのだが、捨三の監視がついていることに気づいた印玄は中村主水、市松、そして捨三に事の経緯を話し始めた。

印玄「たしかに俺はそのおよねとかいう女の父親を殺した。」

懐から竹串を取り出そうとする市松を制して主水は尋ねた。

中村主水「一人じゃねえ。おめえ、女も殺しているだろう。」

しばらく釜で火が燃える音だけが聞こえた後

印玄「ああ。」

印玄は元々はたすけと言う名前だった。印玄が5歳の時、印玄の母おりんは旅の小間物屋と懇ろになって父と印玄を捨てて出ていってしまった。印玄の父は体が不自由だったため、働くことさえできなかった。印玄の父は悲観して高い崖の上から幼い印玄を抱いて身投げしたのだが、印玄だけが生き残った。

印玄「そして俺は旅に出た。俺を捨てたお袋だが会いたかった。」

そして色々旅して時が過ぎた。印玄は旅の僧の姿になっていた。

印玄「この格好なら食いっぱぐれはなかった。そしてお袋にあったのは14年目の秋、水戸街道の取手宿だった。」

おりんは印玄の父が亡くなった事は知っていた。その経緯も知っていた。だが母おりんは印玄にこんな事まで言う淫らな女だった。

おりん「お前、もう女を知ったのかい? なんならさあ、あたいが教えても良いんだよ。」

抱きついてもきたので印玄は拒絶。そこへやってきたのがおよねの父親で、彼はおりんと乳くり出した。思わず印玄は狂乱し、窓から二人を突き落とし、二人はそのまま屋根から落ちて死んだのだ。そしてそれをおよねが目撃していたと言うのだ。

およね「人殺し。人殺し。人殺し。」

と言うわけで一同は全てを知った。

印玄「これで洗いざらいぶちまけた。俺を仕置するならしておくれ。」

一同無言。

その後、印玄はおよねのところへも行き、全てを話した。

印玄「俺は許を乞おうつもりはない。俺を恨みたければ恨め。殺したければ殺せ。生きるも地獄。死ぬも地獄。どっちに転んでも変わりはねえ。」

およねは悩んだ挙句にカミソリで切りつけたが、それだけにとどまった。

印玄「どうした?」

およねは言った。

およね「あたしもおりんに夢中になった父を恨んだことがあります。父が帰ってこない夜、一人泣きながら寝たことも。でも、あたしにとってはかけがえのない父だった…」

と言う最中に同じ女郎屋の女郎が部屋の中に入った。労咳を病んでいた女郎おふく(松川純子)が女郎屋を鞍替えさせられそうになったのだ。散々酷使した挙句に使い物にならなくなった女郎は遠くへ売り飛ばす。およねは阿漕な女郎屋にいたのだ。印玄は一度立ち去り、中村主水は仕置の依頼を断るとおこうに通告した。

さて最終的におよねはお服を連れ出そうとした清吉(松山照夫)に刺されてしまった。女郎屋の主人伝兵衛(遠藤太津朗)の指示に清吉は従っていた。瀕死のおよねは最後の力を振り絞って手紙を残した。お金を返しに来たおこうがその書き置きを読んだ。なお手紙は全てひらがなで書かれていた。

およね(の声)「お願いしました印玄の仕置は取り消してください。その代わり、私達女郎を食い物にしている伝兵衛と清吉の仕置をお願いします。」

この後、印玄もやってきた。印玄は簀巻きにされたおよねの死体を金で買い取り、丁重に葬るのであった。

こうして仕置の標的は変更された。市松が清吉をやり、印玄が伝兵衛を仕置した。なお印玄の仕置を捨三とともに主水はサポートするのであった。なので今回は主水の殺しはないのである。