復職(新・必殺仕置人)
新・必殺仕置人 第1話「問答無用」(脚本:野上龍雄、監督:工藤栄一 (C) 松竹)より
ついに真相を掴んだ中村主水は筑波(岸田森)を呼び出した。中村主水の殺しを寅の会に頼んだのは筑波だったのだ。筑波は矢切の庄兵衛(遠山欽)と彼の情婦だったおかね(二宮さよ子)と組んでいたのだが、
中村主水「おかねさんが死んでしまいました。」
筑波「何?」
主水は懐からおかねが履いていた下駄を取り出した。
中村主水「筑波さんに騙された、悔しいって言ってですねえ、息が絶えても目つぶらないでいましたよ。」
筑波「何が言いたいんだ、貴様。」
筑波は下駄を蹴り飛ばした。
中村主水「何をするんですか。」
主水は下駄を拾って言った。
中村主水「そんな恐い目して見ないでくださいよ。私が一体何をしたって言うんですか? 身を守るために牢破りを叩き斬った。不審な点があるから色々調べようとした。みんな、当たり前の事じゃありませんか。あたしはですね、世の中の仕組みというのが、人間というのが、もう何もかも信じられなくなりました。」
思わず筑波は振り返り、そして主水は宣言した。上司にこんな事を言うのだから凄い。
中村主水「あたしは、これから徹頭徹尾手抜きで行きます。仕事なんか一切しやしません。薄ぼんやりの昼行灯で結構です。」
興奮した筑波は主水が手に持っていた下駄を放り投げてしまった。
中村主水「あ、また放っちまったんですか。言ったでしょ、さっきも。大事にしてくださいよ。まあその前にですね、あたしはもう一つやる事があるんで、ここへきたんですがね。」
と言い終わるや否や筑波が斬りかかったが主水は返り討ちにした。
中村主水「来い。斬れ!」
そして主水は筑波の死体に下駄を供えた。
筑波の隠し金も主水は見つけた。沢山の壺の中に小判を入れ、縄を繋いで池の中に隠していたのだ。だがその金を主水は縄を切って沈めてしまった。曰く
中村主水「世の中にこんなことがあって良いもんじゃねえや。俺が折角運つかんだと思ったら、ところがどっこい腐れ根っこがずるずるずるずる繋がってやがった。」
鉄は偉そうにこういった。
念仏の鉄「そうよ。良いか。これだってお前、贋金かもしれねえ。」
手に持っていた小判を池の中に投げ捨てた鉄だったが
中村主水「おい。」
鉄が懐に小判を隠し持っていたのを指摘し、奪って投げ捨てるのであった。
こうして寅の会で
嘉平「先日の件につきましては頼み人が死亡いたしましたので、なかったこととなりました。」
となり、中村主水は鉄の仲間と合流。表の稼業では昼行灯を装う生活に舞い戻るのであった。