侵入(新・必殺仕置人)
新・必殺仕置人 第8話「裏切無用」(脚本:野上龍雄、監督:高坂光幸 (C) 松竹)より
いつもの寅の会。
吉藏「これより挙句を頂戴しまして本日の興行を終わりたいと存じます。」
虎が挙句を短冊に書いている間、鉄は見慣れない男(名和宏)がいるのに気がついた。胡桃を右手でいじっている音に気がついたのだ。村雨の大吉のマネなのだろうか? なお、短冊は二枚。という事は
吉藏「本日は挙句が二句ございます。まず初めの句。」
その内容は
吉藏「なお、これは十両より競り落としていただきます。
かねみとて
薬売るなり
庄次郎虎漫筆。」
標的は美人丹というインチキ薬を売るかねみ庄次郎(五味龍太郎)である。見慣れない男もセリに加わったが最終的には
念仏の鉄「五両。」
見慣れない男の表情が変わるのが映りつつ
吉藏「ございませんか。ございませんね。」
虎「かねみ屋庄次郎の命、五両にて落札。」
そして次の競りに入った。
吉藏「では、今一句、ご披露させていただきます。頼み料は二十両でございますが、この者は住所不明につき探索費として別途に三両お渡しいたします。では
旅ガラス
江戸に入りけり
闇の重六旅ガラス
江戸に入りけり
闇の重六虎漫筆」
競りが行なわれていったが、見慣れない男こと闇の重六は胡桃を握りつぶすと、ここまでは大吉と一緒だが、逃げやすい障子の真ん前に立って、こう言い放った。
闇の重六「虎がなんでえ。俺をやれるもんならやってみろい。」
闇の重六が投げたのは鉄球。虎は頭を右に倒してかわしたが、建物の飾りが破壊されてしまった。即座に死神が銛を投げたが闇の重六は逃げてしまった。追いかける死神。吉藏が平身低頭、頭を下げながら説明した。
吉藏「これは上方よりの依頼でございます。一年ほど前、あの闇の重六に押し込み強盗を働かれ、一家八名、無惨にも殺された、あるお方が頼み人でございます。その後、重六めは名を変えて仕置人になりすまし、この虎十番会に出席していたものと思われます。顔を見知らぬ事とは言え、このような不始末をしでかしました。ただただ事の不行届。」
さらに
虎「皆の衆、お聞きの通りだ。本日を以て仕置人世話役の座を下させていただく。」
だがこれに異議を唱えたものがいた。
念仏の鉄「ちょ、ちょ、ちょっと待った。俺は不承知だぜ。お前さん、これまで世話役の務めを立派に果たしてきた。このことについて俺達はなんの不満もねえ。」
一同、頷いた。
念仏の鉄「お互い名前も知らない俺達がお上の目を潜って裏稼業を続けてこられたのも寅の会があってこそだ。まあ、今度のことは災難だ。最後の始末さえつけてくれればこれまで通り世話役をやってもらいてえ。僕はこう思うんだが。」
一同、同意した。
念仏の鉄「よーし、決まった。」
そして鉄達は三三七拍子をするのであった。