標的型メール(新・必殺仕置人)
新・必殺仕置人 第16話「逆怨無用」(脚本:村尾昭、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より
念仏の鉄は自分が殺されて墓に埋められる夢を女郎屋で見た。恐怖で顔が真っ青になる鉄だったが、何事もなかったように女郎と遊んだ。
そして朝になり、鉄が帰ってくると巳代松が血相変えてやってきた。手紙が来たのだという。
巳代松「見ろよ。」
だが鉄は見もせずにくしゃくしゃに丸めて後ろに捨ててしまった。曰く
念仏の鉄「見なくたってわかってるんだよ。松、お前を殺す、そう書いたんだから。」
つまり鉄が書いていたずらしたのだ。
念仏の鉄「オタオタ、オタオタしちゃって、お前、殺されるのが、そんなにこわいの?」
例によってニヤニヤしている。怒った巳代松は鉄を殴る蹴るしてボコボコにして去っていった。
念仏の鉄「ハハ。ボロ松。てめえそれでも人の…」
ここでハッと気がついた鉄は周りを見回したが聞いている人はいなさそうだったので
念仏の鉄「あ、いたあ。」
と言いながら立ち上がり、自宅に戻った…とその時、投げ文が投げ込まれた。その文面は
念仏の鉄、近いうちに
必ずお前を殺してやる
これを読んだ鉄は巳代松の家へ直行。鍋を直している最中の巳代松に
念仏の鉄「おい、松。二番煎じは通用しないんだ、バカ。」
とほざいて先ほどの投げ文を投げ込んだのだが、返ってきた答えは
巳代松「おい、鉄さん、自慢じゃねえがな、俺はこんなうめえ字書けねえよ。よく見ろよ、おめえ。」
慌てる鉄。
巳代松「なあ、これは一仕事だぜ。」
というわけで絵草紙屋の地下室に中村主水も含めた全員集合。
巳代松「鉄をな、殺すって野郎が現れたんだよ。」
中村主水「へえ。」
無言の鉄に対し
中村主水「おい、お前らしくもないなあ。そんなことで考え込むこともないだろう。どうせ俺達は地獄へ片足突っ込んでるんだ。」
巳代松「今更、バタバタすることはねえや。」
この時点では他人事のこの連中はこう言った。すると鉄は
念仏の鉄「な、どうせ片足突っ込んでるんだよ。だからよ、ま、とにかく、俺、な、返してくれよ。」
と帰ろうとしたのだが正八とおていには止められ、巳代松は鉄が銭を出して仕事にすると言い出す始末。
念仏の鉄「ちょっと待てよ、冗談じゃねえよ、な。これはよ、俺んところに来たんだから。俺んところ来たんだからよ。今回だけ頼む、な。今回だけ頼む。俺一人でやらせてくれ。頼む。一回ポッキリ。ね。」
すると中村主水はこう言った。
中村主水「おめえ一人でやろうってのかい。」
念仏の鉄「そう。」
中村主水「馬鹿野郎。口ででけえこと言ってるが、一人じゃ何もできねえことは(豆を投げてぶつけながら)おめえがよく知ってるんだ。何でもかんでも一人でやるんなら、俺達がこうやってつるんでることはねえじゃねえか。ん?」
しばらく考えた末に鉄は座ったが、今度は「いくらでやる?」という巳代松の言葉に鉄はプッツン!
念仏の鉄「馬鹿野郎。やっぱり俺一人でやる。いいよ。仲良し五人組解散! 結構。」
鉄は出て行った。
ところがその後、巳代松のところにも脅迫状が届いた。筆跡は鉄のところに来たものと同じだ。時を同じくして、鉄と取り違えられて大工が殺される事件も発生。
念仏の鉄「おい、松。これは一通りや二通りの相手じゃねえぞ。」
そして中村主水のところにも脅迫状が届いた。文面は
なかむらもんど
お礼まゐりに
おまえをころ
してやる
というもの。せんとりつもいる前で広げて読んでしまったので
中村主水「これはいたずらですよ。」
と誤魔化したのだが、本音はもちろん違う。主水は小芝居打って鉄を大番屋へ連れて行き、二人きりで密談した。
念仏の鉄「(脅迫状をみて)これは俺達のところへ来たのと字が違うなあ。」
つまり筆跡は念仏の鉄と巳代松のところに届いたものと違っていた。
中村主水「俺とお前達がつるんでいることは誰も知っちゃいねえ。だから、これも別口にちげえねえと思うんだ。ま、俺は俺で当たってみる。」
とその時、思わぬところから糸口が掴めた。
番屋の小者「中村様、その男の身元を保証するという男が来てましたが。」
その男は第10話で鉄達が仕置した相模屋の二代目の島蔵(南道郎)だった。嘘八百並べて鉄を連れ出したが、鉄と巳代松に脅迫状を出したのはその男だったのだ。島蔵は先代の仇を取らなければならないので脅迫状を出したのだ。それを堂々と鉄に島蔵は述べた。
そして中村主水に脅迫状を出した者も主水は調べ上げた。先代の弟で主水が捕まえて島送りにした又七(松山照夫)が戻ってきたのだ。
鉄は寅の会から情報が漏れたと考え、裏切り者を探すために相模屋殺しを依頼することを発案。自分も金を要求されたので主水は渋ってこう言い出した。
中村主水「これは俺の表の仕事だぞ。おめえ達には頼まねえ。この問題は俺一人で片付ける。」
だが
念仏の鉄「おい。えー、(わざと棒読み気味で)口ででけえこと言ってるが、おめえ一人じゃ何もできねえことはおめえも一番よく知ってるはずだと。えー、もし勝手なことをするんなら、俺達はつるんでることはねえ。」
鉄は豆を投げて主水の額にぶつけ、渋々、主水は金を出すのであった。