情報漏洩未遂(新・必殺仕置人)

新・必殺仕置人 第33話「幽霊無用」(脚本:岡本克己、監督:高坂光幸 (C) 松竹)より

正直言って、あまり面白い話ではなく「休診無用」と最下位争いするような出来なのだが、一応、ネタはあった。

御舟蔵の番人和市(藤原釜足)の娘婿の伊之助(森次晃嗣)は御用船(とは言いながら蔵の中に安置しているのでもう使うことはない)の飾りなどを横流しして売り払い、安物と取り替えて大金を得ていた。それを知った和市を伊之助は切腹に見せかけて殺害。和市の娘お糸(松本留美)が寅の会へ伊之助殺しを依頼した。

さて挙句は

幽霊の
正体みたり
娘婿
操る者の
ありとみるなり

頼み料はたったの二両。三十俵二人扶持ではそれが精一杯だったのである。仕置人達は馬鹿馬鹿しいと競りから降りてしまい、鉄が競り落とした。

と言うわけで正八が伊之助を調べに床下に潜り込んでいる時に事件が起きた。御舟蔵の番人の収入だけでは暮らしていけないのでお糸は内職に精を出していた。その困窮が伊之助の犯行の動機でもあるが、兎に角、それを目障りに思った伊之助は風車作りの内職をやめさせようとした。

伊之助「こんなもの作るのはやめろ!」

お糸は内職をやめず、さらにこんな事を言い出した。

お糸「あなたは死にます。あなたは殺されます。」

床下に潜んだ正八は匕首を手にしていた。

伊之助「殺される? 俺が? 誰に? お前にか?」
お糸「いいえ。」
伊之助「誰に?」

正八が匕首を握る手に力を入れたがお糸はそれ以上は言わなかった。

伊之助「誰かに俺を殺せと頼んだという事か?」
お糸「そうです。」
伊之助「亭主の俺をか?」

お糸はその問いには答えず、こう言った。

お糸「三年になりますねえ、夫婦になって。」

それにイラっとした伊之助はこう言った。

伊之助「誰に頼んだ?」
お糸「どうしてあなたは夫婦になったのですか?」
伊之助「俺を殺すのは誰なんだ?」
お糸「私は父に言われるままにあなたと祝言しました。祝言の日に初めてこの人で良かったと思いました。あなたは私では不足だったんでしょうか。」

全く話が噛み合わない。それを聞き伊之助は「誰なんだ」と殴りながら尋ねたが、お糸は答えようとはしなかった。色々殴る蹴るの乱暴されたがお糸は話さなかった。伊之助はついに諦めてこう捨て台詞を言って部屋の外に出た。

伊之助「よーく考えとけ、俺が戻って来るまでなあ。」

泣くお糸。伊之助と入れ替わるように正八が現れ、お糸に告げた。

正八「お前よう、もし頼んだ人の名前喋ったら、命なかったぞ。早く逃げろ。」

正八も立ち去った。

なお殺しの分担は次の通り。

今回、おていは出る事は出るが殺しには関わらない。なお伊之助への骨外しとお糸が内職で風車に心棒をブッ刺す動きが同期しており、事後、お糸が自害して果てたことも付け加えておこう。