模倣品 その3
新・必殺仕置人 第34話「軍配無用」(脚本:古市東洋司、監督:原田雄一 (C) 松竹)より
脚本を書いた古市東洋司さんは当時は朝日放送の社員。1942年兵庫県神戸市生まれで1966年米国アラバマ州立史学科卒。1979年3月まで朝日放送勤務。その後、荒馬間(あらばかん)というペンネームで小説家になって1985年「新・執行猶予考」にて第24回オール読物推理小説新人賞受賞。1997年11月死去とのことである。得られた情報はこれだけだが、ペンネームの由来はなんとなくわかったような気がする。
さて勧進相撲に出ている綱綿(大前均)は大人気。人が群がるのをみて。
正八「正ちゃん、頭いい。」
何を始めるのかというと、綱錦の手形を売り出した。鉄とおていは賭けを始めていた。例の地下室で正八は中村主水に何とか勧進相撲の会場に潜り込めないのか頼んでいたが、無理そうだ。
中村主水「は、はあ、それでせめて手形をか。おめえ、なかなかいいところ、目つけたな、商売人だ。」
そして頼んだ。
中村主水「おい。これ、五、六枚、なんとか元値で売ってくれねえかな。欲しがってる奴がいっぱいいるんだなあ。」
あっさり正八は承諾した。
正八「いいよ。旦那が言うんだもん。五、六枚なんて言わないで二十枚でも三十枚でもいつでも持ってきなよ。みんなが喜ぶ。俺が儲かる。ね。」
主水は喜んだ。
中村主水「しかし、さすが関脇だ。立派な手してるじゃないか。」
そして手形に自分の手を合わせてみて気がついた。
中村主水「これ、本当に綱錦のもんか?」
この後、正八がからくりをご披露。なんと正八が右手に手袋はめて墨を塗り、ペッタン、ペッタン、して拵えたものだったのである。
中村主水「この野郎、ガセネタか。俺に詐欺の片棒担がせる気か?」
と十手をちらつかせたのであるが
正八「分前要らないの?」
これは効いた。
中村主水「半分よこすか?」
これで話がついたようで、その後、立行司の日下清風(岩田直二)が「差し違え」の後で切腹し綱錦が髷を切った事件が起きた後、売上増加。正八が上で売っている間、主水がペッタン、ペッタン、押している横で
おてい「しかしまあ、よく売れるわね。」
念仏の鉄「(寝そべりながら)相撲取りが髷切ったくらいでこの馬鹿騒ぎだ。わからないねえ、大衆の心って。」
中村主水「(押したりしながら)ま、人間なんてそんなもんだぜ。」
とか言っている場面が流れた。
そしてこれで話が終わるかと思えば、そうではない。なんと例の手形をせんとりつが買ってしまったから、さあ大変。手形を見ながらせんとりつは立派な手形だと言い、帰ってきた主水に
中村せん「その手形は逞しい肉体を持った綱錦のもの。」
さらにりつは行事が切腹した事件を書いた瓦版を見せ
中村せん「いいですか。事は只今より実行していただきます。」
中村主水「何を始めるんですか?」
中村せん「力士のような逞しい肉体を身につけていただきます。」
中村りつ「行司のような精神を養っていただきます。」
中村せん「健全な肉体に健全な精神が宿ると申すではないですか。健全な肉体に健全な子供が宿らぬわけがございません。」
というわけで夜も「がんばる」羽目に陥るのであった。