フェイクニュース(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第22話「一筆啓上 狂言が見えた」(脚本:横光晃、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

さていつもの飯屋。相変わらず主水は同心の格好をやめておはつを目当てに店に来ていた。お茶を持ってきたおはつは気がついた。

おはつ「あ、おじさん、(着物が)破けてる。どうしたの、これ。」

念のために書くと、三原屋宗右衛門(稲葉義男)の手下の浅吉(蟹江敬三)が投げまくった手裏剣を避けている時にそうなったのだが、このネタには関係ないし

中村主水「いやいや、いいんだ。」

と誤魔化したので先へ進もう。

おはつ「うちの人に縫って貰えばいいのに。」

と言った。主水は出て行こうとしたのだが

おはつ「あたし、縫ってあげる。」

思わずニヤけた主水は頷いてしまい、縫ってもらっていたのだが、そこへせんとりつが通りかかったから、さあ、大変。しかし主水は気がつかず

中村主水「ほう、うまいもんだなあ。」

とニヤけていた。その最中にせんとりつは店の前で立ち止まってしまった。その声を聞き、ハッとする主水。運悪く、りつに気づかれてしまった。主水はおはつを店の奥へ帰らせて裏口から立ち去ろうとしたのだが

中村りつ「あなた。」

仕方なく挨拶する婿殿。

中村せん「そのなりは何事です?」

ここで主水がハッタリかまして嘘ついた。

中村主水「実は役目がら、隠密の探りを入れていたのです。あの飯屋の娘は、あんな可愛らしい顔して、実は江戸でも有名な女スリ。」

この大嘘をせんとりつは信じてしまった。

中村主水「私が同心だと言うのはくれぐれも御内密に。」

主水はせんとりつを店の椅子に座らせた。そして奥に入っておはつには

中村主水「あの二人は武家の妻女のような格好をしておるがねえ、ホントは名うての女スリ。」

おはつもこの大嘘を信じてしまった。さて出てきた料理を食べたせんとりつの感想は

中村せんとりつ「おいしいこと」

であった。