フェイクニュース その2(必殺仕置屋稼業)

必殺仕置屋稼業 第22話「一筆啓上 狂言が見えた」(脚本:横光晃、監督:松野宏軌 (C) 松竹)より

仕置を終えた中村主水は帰宅したのだが

中村せん「婿殿、お入りなさい。」

どうも様子がおかしい。障子を開けるとせんとりつが物凄い形相で座っていた。そして出てきた言葉は

中村せん「あなたという人は自分の家来が大怪我をしたというのに無情にも見捨てたそうですね。」

なんと亀吉がこの件をせんに話したようである、しかも有る事無い事を。

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主水はこう答えた。

中村主水「大怪我じゃありませんよ。道でひっくり返りましてねえ、ここんとこ(右肘)、ちょっと擦り剥いただけです。」

するとりつがこう言った。

中村りつ「亀吉を置き去りにして今時分までどこにいらしたんです?」
中村せん「何をしてたのです?」

三原屋宗右衛門(稲葉義男)を仕置しましたなんて言えるわけがないので

中村主水「お勤めです。見回りです。最近、野盗が増えましてね。しかし、亀吉の奴、そんなくだらないことを一々告げ口に来るんですか。いや、もう、あの男は二、三日うちにクビにしようかと思っているんですよ。あんなウスノロの大馬鹿者は役に立ちませんからなあ。」

さてここで主水の想定外の事態が起きた。なんと亀吉が隣の部屋にいたのである。左腕を骨折したのか、つっている。

中村せん「よろしいでしょう。嘘をついてもすぐわかることです。亀吉、今日はご苦労様です。」

だがここで亀吉の「ウスノロの大馬鹿者」であることが証明される事態を亀吉がやらかしてしまった。なんと驚いた亀吉はつっていた左腕を引っこ抜いてしまい、両手をついて土下座してしまったのである。直後に、自分がやらかした事に気がついて、慌てて左腕を元に戻した亀吉だったが、そのまま、玄関へと去って行った。それを腹に一物ある主水は見送りに出てやった。そして嫌味を言い放った。

中村主水「亀、腕はちゃんと手当てしたのか。」
亀吉「へい。お陰様で。」
中村主水「みせろ。」

亀吉は左腕を見せるより他はなかった。当たり前だが、怪我などしてはいない。

中村主水「母上、こいつ…」

亀吉はせんからもらった駄賃を主水に渡した。主水が駄賃を数えようとすると、瞬時にりつが現れて

中村りつ「(駄賃を取り上げ)あなた。お風呂に入って早くおやすみください。」

りつが立ち去った後、亀吉はこう言った。

亀吉「旦那も大変ですねえ。」
中村主水「こういう夜は特に激しいんだ。」

しみじみと語る主水であった。